ネガ・マルーカにNOを! ブラジルを愛すればこそ

文化の盗用

みなさん、ネガ・マルーカ(nega maluca)って聞いたことありますか?

黒人女性の身体的特徴を大げさに表現して仮装した人のことを言うポルトガル語です。肌を黒塗りし、極端なチリチリヘアーに分厚い唇。胸やお尻には詰め物をして、過度に性的なアピールをすることもあります。negaは黒人女性の意味で、malucaは「狂った、ばかげた、奇妙な」という意味なので、どう好意的に訳してもネガティブな意味は免れません。

先日、私が日本語字幕を付けてyoutubeに投稿したガビ・オリヴェイラ(Gabi Oliveira)さんの動画を見ていただいた人は、彼女が「子供のころネガ・マルーカとからかわれて非常に傷ついた。子供は特にそういういじめに敏感だ」と話していたの覚えてますか?あのネガ・マルーカです。

ブラジルではネガ・マルーカと呼ばれていますが、より一般にはこういう仮装行為をブラック・フェイスと言います。アメリカ合衆国やブラジルなどアフリカ系の人口が多い国は言うまでもなく、世界的な常識として、ブラック・フェイスは完全に人種差別的行為とみなされています。

http://www.asyura2.com/17/senkyo237/msg/794.htmlから転載

ところが「人種的」な多様性の低かった日本社会では、人種的な問題、とりわけ黒人に関する問題について非常に感度がにぶく、2年前にもダウンタウンの浜田雅功さんが「ガキの使い!大晦日年越しSP 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時」(日本テレビ)の中でエディ・マーフィーに扮して黒塗りをし、外国メディアからの抗議も受けて、日本テレビがそのシーンをカットするという問題が起きています。「ブラックフェイス」「浜田」でググれば、関連記事がたくさん出てきますので、この問題を考えるきっかけにぜひ目を通してみてください。

https://www.facebook.com/Nega-Maluca-Japan-243080512534489/から転載

さらには日本のブラジル・コミュニティーには、ネガ・マルーカに扮して各種イベントを盛り上げるのを仕事にしているブラジル人コメディアンもいて、それに対する批判がほとんど見られないという現状もあります。みなさんも東京や名古屋、浜松などのブラジル・フェスタで見かけたことがあるのではないでしょうか?多くの人たちは、あれを面白おかしく受け入れ、一緒に写メを撮ったりしてはしゃいでいます。

ちなみにこのコメディアンのfacebookには「クロちゃん Nega Maluca」というタイトルがつけられていますが、この「クロちゃん」という呼び方は、私がブラジルの日系人の方々の口から非常によく聞いた呼び方です。私がサンパウロの邦字新聞で記者をしていたころ、「あんたブラジルで何しよるの?」「どこでポルトゲイス覚えたの?」とよく聞かれました。もちろん私はカポエイラの話をするのですが、その時決まって帰ってきた答えが「カポエイラって、あの黒んぼの?」「クロちゃんの?」というものでした。高齢の方ほど、このような言い方をする人が多かったです。私はブラジルに渡って歯を食いしばって頑張った移民の方々に心から敬意を持つ人間ですが、この点だけは日系人の皆さんのためにも、指摘させていただきたいと思います。

アフロ・ブラジル文化の代表たるカポエイラやサンバをたしなむ者の一人として、私はネガ・マルーカ、ブラックフェイスに断固反対を表明します。

前に「世直しの道具としてのカポエイラ」でも書きましたが、カポエイラが生み出された文脈、そこから派生してくる社会的な役割として、人種間の平等や共生のあり方を考えるということがあります。しばしばカポエイラのホーダをミクロなホーダ(roda pequena)、私たちの生きる社会をマクロなホーダ(grande roda)と表現することがありますが、その大きなホーダで我々がするジョーゴの一つの形は、たとえばネガ・マルーカをきちんと批判するということだと思います。

よく言われる、カポエイリスタ(capoeirista)とカポエイラ・プレーヤー(jogador de capoeira)の違いも、この辺りが分かれ目になってきます。あなたはどちらですか?

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