第4クールはコブリーニャ・ヴェルジとパスチーニャ

カポエイラ読解講座

毎週水曜日の21:00になると北は札幌、南は福岡、はたまたブラジルはバイーアから仲間が集まってきます。その日は私たちの大切な夜会。それぞれの居場所から時空を超えて、私たちの心がブラジルの古都サルヴァドールを散策する日です。

ビンバがリング上でアンゴレイロたちと対戦していたセー広場、弟子たちのホーダをパスチーニャが目を細めて眺めているペロウリーニョ、ヴァウデマール、トライーラがビリンバウを弾き、ナジェ、ブガーリョがジョーゴをしているコルタ・ブラッソのホーダ、ビゾウロが闊歩していたサント・アマロ・・・。

「カポエイラしか読まないポルトガル語読解講座」での濃密な学びの時間は、私にとって、文字通りの意味で祝祭です。とくにコロナで物理的にはなかなか集まりにくく、練習もホーダもままならない状況にあって、夜な夜なカポエイラの歴史の森をうろつく快感は、ハマります・・・!

一昨日終了した第3クールではメストリ・ビンバのリング上で繰り広げられた異種格闘技戦の様子を垣間見ました。サルヴァドールの有力新聞『A TARDE』の編集部に呼ばれたメストリ・ビンバは、カポエイラ・ヘジオナウ創出の経緯、師匠ベンチーニョから学んだカポエイラに何を付け足して、何を取り除いたかを語ります。リング上の試合のルールも最小限の反則以外は何でもありであるべきで、いつなんどき敵に襲われても対応できるのが真のカポエイラだ、ビリンバウ、パンデイロの伴奏など意味がないと持論を展開します。

研究者が書いて本の形になった文章ではなく、1936年3月16日付の実際の新聞記事ですから、こういうのを歴史学では一次史料と言いますが、本当にメストリ・ビンバの話を間近で聞いているような息遣いが感じられます。

もちろん肝心のポルトガル語の勉強も濃いですよ。昨日の一幕を紹介しましょうか?

たとえばビンバと対戦したゼイ(Zey)がメイア・ルーア・イ・アルマーダを1発とチゾウラを1つしただけだった(Zey fez apenas, uma meia lua e armada atingida e uma tesoura atingida. )と出てくれば、この「apenas(ただ、~だけ)」は「somente」に置き換えられますかという質問が飛び出します。すると、apenasは数量の方に重点があって「~だけ」という意味だけど、somenteは「~しかできなかった」というようなニュアンスで、apenasを使う方が優しい言い方ですよ、などという説明が、ブラジル人アドバイザーのソウさんからされます。

するとまた別のメンバーが、同じく「~だけ」を意味する「só」との違いは何かと質問し、たとえば「昨日タルトを一つだけ作った(3つではなく1つという数重視)」というのと「昨日はタルトを作っただけだった(他のことをせずにタルト作りしかしなかったという行為重視)」のニュアンスをどう表現し分けるかという話になって、私も初めは

Ontem fiz uma torta.(昨日タルトを一つだけ作った)

Ontem fiz uma torta.(昨日はタルトを一つ作っただけだった)

のように、「só」の位置の問題かと考えたのですが、実は違っていて、次のように「uma」をつけるかつけないかが分かれ目だというようなディテールを学んでいます。

Ontem fiz só uma torta.(昨日タルトを一つだけ作った)

Ontem só fiz torta.(昨日はタルトを作っただけだった)

いかがですか?なかなかマニアックですよね?ほとんどの人は、今の部分飛ばし読みしてると思いますが(笑)、こういう細部にこだわって詰めていくことで、ポルトガル語を一人で読み進んでいける地力が少しずつ身についていくんですね。なかなか一人ではそこまでストイックにできなかったり、ともするとスルーしてしまいがちですが、グループでアタックするからこそ突き進める部分だと思います。

来週からの第4クールでは、コブリーニャ・ヴェルジのプロフィールを少しだけかじってから、「メストリ・パスチーニャがブルース・リーに負けた」というセンセーショナルな見出しの新聞記事にチャレンジします。

講座の概要は以下の通りです。カポエイラの歴史を探訪しながらポルトガル語の読解力をつけることに関心のある方は、ぜひ合流してください。

「カポエイラしか読まないポルトガル語読解講座」

■日時:毎週水曜日 午後9時から10時 Zoomを利用します。
■進め方:
①決められた範囲を参加者全員で訳してきます。
②その週の担当者が翻訳を発表し、久保原が補足、解説をする。
③発表者以外の参加者も疑問、質問を自由に行う。
※欠席した人にはその日の日本語訳文と授業の録画を配信する。
■読むテーマ:古いメストリたちのプロフィールやカポエイラの歴史について、なるべく平易なものから始める。
■参加費:3,900円(月4回)、10,500円(3か月・12回)

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